今日は朝から着物を着ています。
一年半前までは、毎日着ていた着物を着なくなったのは、コロナ禍でなんとなく肩身が狭くなったから。
私が着物を着る理由は、女将だからです。立派な旅館ではないですが、創業者が街道を歩く人のために用意した休憩処から始まった間もなく一世紀を迎える宿が、私の生きる場所。コロナ禍でお客様が激減して、開店休業のような状況下、最初の頃は、いつ何時お客様がお見えになるかわからないと、着物を着ていましたが、「お客様もいないのにそんな格好で」と言う声に心が揺らぎ、全てを仕舞い込んでいました。
なぜ今日は着ているかと言うと、ある2人との出会いによって気付いたことがあったから。私は彼女たちから、着物に関する相談を色々と受けました。
『後ろからの着姿が綺麗に決まらない』とか、『おはしょりの始末が難しい』とか、『どこの襦袢を使っているか』とか、『洗いはどうしているか』とか。私のわかる範囲で、全ての質問に回答をしたところ、
「その知識と技術は活かさないと勿体ない」と。
幼い頃から慣れ親しんできた着物のある暮らしは、私にとってごく普通のことでしたが、実はすごく素晴らしいこと。知ってて当たり前、出来て当然のことは、奇跡の積み重ねだと言うことに、気付かせてくれたおふたりを心からありがたいと思いました。
前置きが長かったのですが、そんなわけで、今日は朝から着物でフロントに立っています。
季節の変わり目は、単衣か袷か迷うところ。着物は、動きやすい胴抜きで誂えた『藍染の寄せ小紋』に白い織の名古屋帯、帯揚げ帯締めは、挿し色に深みのある秋らしい赤をチョイスしました。
今日の気温は、24℃。着物用スリップに長襦袢と省略して着ています。
伝統やしきたりを守って基本に忠実に着ることはとても大事だし、それを伝えることも大事。それより大切なことは、日常に普通に着物のある暮らしをするならば、自分らしくあること。と、私は思っています。例えば、10月半ばでも気温が27℃なら単衣で良いし、染めの着物に織りの帯を合わせても、自分が気に入っているのなら良いのです。三つ編みにベレー帽を合わせたり、少し短めに着て革靴やブーツを合わせても素敵です。
本格的に指導をされているお教室の先生に怒られてしまいそうですが、真夏に袷を着るとか、真冬に絽の帯揚げをするとか、春に紅葉模様に纏うとか、あまりにも突拍子もないことをしでかさない限り、私は自由で良いと思っています。
好きなものを毎日の暮らしに取り込んで行くには、自分が如何に楽しいかがポイント。ちなみに今日の私は、占いでシルバーと白が今日の開運カラーだと言われたので、と言う安易な考えで帯から先に選びました。
また近いうちに、私のコーディネートを披露します。