私の見ている世界

子供たちが成人して、愛犬たちとメダカたちに夢中。傍らで綴った小説は、来春電子書籍化されます

夢で会えたら

ただの夢のお話です。

伯母の夢を見ました。見たといっても、姿を見たのではなく、揺れる木の枝を見て「伯母が笑ってる」と思った夢。そばにいた従姉妹に「それ、気付いてあげられたのね」と優しく言われたところで目が覚めました。

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母が心臓弁膜症で入院している間、私は母の実姉である伯母の家に預けられていました。そこは、とても古くからあるお寺。早朝からお経が聞こえる中で目覚め、伯母の作る朝ごはんを食べて、伯母の手伝いをするのが日課。記憶の中の伯母は、とても優しく、気さくな人でした。

毎年年末12月28日に杵と臼でお餅つきをして、私は伯母と従姉妹とともに大量の鏡餅とのし餅を作り、伯父と従兄弟は門松を作りました。

伯母の家には汲み上げ式の井戸があり、餅米を研ぎ、炊くのには、この井戸水を使いました。真冬の井戸水は冷たくて、餅米を研ぐ手は真っ赤になり、伯母は、つきたての熱いお餅を触った温かい両手で、何度も包み込んでくれたものでした。

 

月日が経ち、私が成人を迎えた年の5月の早朝、従兄弟から一本の電話が入りました。

伯母が亡くなったと。焼身自殺でした。

お寺の朝は早く、伯父も従兄弟もまだ薄暗い頃から起きています。日が登るより前、境内の真ん中に、黒い何かが転がっていて、辺り一面焦げた臭いが漂っていたそうです。

 

お通夜、告別式を終え、従姉妹から伯母がノイローゼ気味だったことを聞きました。その後ろで、同居していた従兄弟のお嫁さんが、厳しい表情で座っていました。

私は、伯母が亡くなったのはこの人のせいだと勝手に解釈してしまい、すっかり疎遠になってしまったのです。

 

伯母の夢を見た朝、心がとても暖かくて、懐かしくて、言いようのない気持ちになりました。姿を見てはいないのに、ただ揺れている木の枝だけだったのに、それを『伯母の夢』と思うことに、不思議と何の違和感もありません。

次に里帰りする時は、お線香と花を手向けに立ち寄ろうと思っています。

他愛もないただの夢のお話でした。